ナイキはかつて、スポーツシューズの王者として不動の地位を誇り、NBAのマイケル・ジョーダンやゴルフ界のタイガー・ウッズをはじめとするスーパースターたちを起用し、そのブランドを世界に広めてきました。特に「エア・ジョーダン」シリーズは、スポーツシューズの枠を超えて、ファッションやヒップホップ文化にも大きな影響を与えたことで、ナイキは「クール」の象徴として君臨していました。しかし、最近ではそのブランド力に陰りが見え、競合他社に後れを取る場面が増えてきています。
ニューヨークのセントラルパークでの一幕がその変化を物語っています。春の日差しの中、多くの人々がランニングやジョギングを楽しんでいますが、その足元に目を移すと、ナイキを履いている人の割合は減少し、代わりにスイスのブランド「オン」や、アシックス、HOKAなど、他のブランドを選ぶ人が増えていることがわかります。
ナイキへの不満と新たな選択肢
最近では、ランニングシューズとしてナイキではなくアシックスやサッカニーといったブランドを好んでいると言います。これまでナイキのシューズには満足できなかったというサラさんにとって、足にフィットするサッカニーなどのブランドがより魅力的に映るのです。また、「ナイキはダサい」と断言し、代わりに「HOKA」を愛用していると語る人も出ています。特に、長距離を走るウルトラマラソンのような過酷なレースでもHOKAが選ばれている理由は、その履き心地の良さにあります。
ブランド力低下とその背景
ナイキのブランド力は、ここ数年で顕著に低下しています。英調査会社「ブランド・ファイナンス」のランキングによると、ナイキは2017年には26位に位置していましたが、2025年には66位まで下がっています。この原因の一つとして、ナイキの「イノベーションの停滞」が挙げられます。以前は革新的な製品を次々と生み出し、ファッション性と機能性を兼ね備えたシューズで市場を牽引していたナイキですが、最近では新しいアイデアやデザインが不足し、消費者の期待に応えられない場面が目立っています。
さらに、ナイキは競争力の維持に苦しんでいます。特に、最近では「EC(電子商取引)事業」に注力し、直営店の販売を強化しましたが、その戦略は必ずしも成功していません。オンライン販売の拡大を目指し、アプリや限定モデルを活用して新たな購買層をターゲットにしましたが、販路の絞り込みが消費者の不満を招き、「欲しい時に商品が手に入らない」という状況を作り出してしまったのです。
転換期と原点回帰
ナイキが直面した転換点は、20年にジョン・ドナホー氏がCEOに就任したことです。ドナホー氏はEC事業の強化と直営店への顧客誘導を進めましたが、その後退任し、後任のエリオット・ヒル氏がCEOに就任しました。ヒル氏は、ナイキの「原点回帰」を掲げ、「アスリートを全ての中心に据える」と再宣言しました。ナイキが再び強さを取り戻すためには、スポーツの本質に立ち返り、アスリートに寄り添った商品開発と革新を行う必要があるのです。
まとめ
ナイキは、かつての「クール」なブランドイメージを再構築しなければならない時期に差し掛かっています。競合他社の台頭により、かつての王者としての威光は薄れつつありますが、新たな経営陣が原点回帰を目指し、革新とアスリートのニーズに応える製品を提供することが求められています。ナイキが再び市場の中心に返り咲くためには、消費者の期待に応え続けるための柔軟性と創造力が不可欠です。
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